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東京地方裁判所 昭和51年(行ウ)97号 判決

原告 西沢拓三

右訴訟代理人弁護士 斉藤展夫

同 飯塚和夫

同 佐治融

同 久留達夫

同 窪田之喜

同 木村康定

同 関島保雄

同 山下正祐

同 佐川京子

同 村田由美子

同 高木一彦

同 志田なや子

被告 町田税務署長 早川博治

右指定代理人 松本克己

〈ほか三名〉

主文

1  八王子税務署長が昭和四八年三月一四日付けで原告の昭和四四年分及び昭和四六年分の各所得税についてした各更正及び各過少申告加算税賦課決定(それぞれ異議決定及び審査裁決による一部取消し後のもの)をいずれも取り消す。

2  八王子税務署長が昭和四八年三月一四日付けで原告の昭和四五年分の所得税についてした更正及び過少申告加算税賦課決定(それぞれ異議決定及び審査裁決による一部取消し後のもの)は、総所得金額一七七万七九九七円を超える部分について、いずれも取り消す。

3  原告のその余の請求を棄却する。

4  訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告、その余を被告の各負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  八王子税務署長が昭和四八年三月一四日付けで原告の昭和四四年分ないし昭和四六年分の各所得税についてした各更正及び各過少申告加算税賦課決定(それぞれ異議決定又は審査請求による一部取消し後のもの)をいずれも取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  課税経緯

原告は肩書地においてオートバイ等の販売及び修理業を営んでいるが、昭和四四年分ないし昭和四六年分(以下「本件係争各年分」という。)の各所得税に関する原告のした各確定申告、これに対する八王子税務署長の各更正(以下「本件各更正」という。)及び各過少申告加算税賦課決定(以下「本件各賦課決定」という。)、これに対する原告の異議申立及び審査請求とこれについての異議決定及び審査裁決の経緯は、それぞれ別表一の1ないし3記載のとおりである。

なお、昭和五四年七月一〇日、原告の住所地を管轄する税務署長が八王子税務署長から被告に変更された。

2  不服の範囲

本件各更正(右異議決定及び審査裁決によって一部取消された後のもの。以下同じ。)について、以下の各項に不服がある。したがって、本件各更正を前提とした本件各賦課決定(右異議決定及び審査裁決によって一部取消された後のもの。以下同じ。)についても不服である。

(一) 税務調査手続

本件各更正に先立って行われた本件係争各年分の原告の所得税についての調査(以下「本件調査」という。)において、

(1) 本件質問検査は、その必要性を欠く点

すなわち、質問検査は、原告の確定申告が過少であるなどの合理的な疑いがある場合にその必要性が認められる(所得税法二三四条参照)ところ、本件調査における質問検査権の行使はこの必要性を欠き違法である。

(2) 金子係官が、原告の求めにもかかわらず、本件調査理由の開示を拒否した点

すなわち、調査に当たって質問検査権を行使する場合は、その理由及び必要性を具体的に開示すべき義務があり、本件質問検査に当たった八王子税務署長所属の金子係官に対して原告が右理由開示を求めたのに、同係官はこれを拒絶した。

(3) 本件調査が、その調査の態様・時期において社会通念上相当な限度を明らかに逸脱した点

すなわち、原告に対する臨店調査は、昭和四七年九月四日から昭和四八年二月六日までの間に前後一九回にわたって行われ、しかも、昭和四八年一月二三日には約三時間、同月二六日には約七時間、同月二九日には約四八時間という長時間にわたり、また、昭和四七年一二月二一日から昭和四八年一月一九日までの年末年始という最も多忙な時期に連続して六回も臨店し、かつ、右一月一二日以外は、全て事前の通知をしない。

(4) 金子係官が行った反面調査が、その必要性及び補充性の要件を欠いている点

すなわち、納税者の得意先について反面調査を実施することは、当該納税者に信用の失墜、得意先の喪失という多大な被害を与えることになるから、一般の調査より厳格な必要性を要し、かつ、その反面調査が客観的に見てやむをえないと認められる場合に限って行われるべきものであって、この二つの要件を欠いた本件反面調査は違法である。

(二) 他事考慮もしくは調査権の濫用

本件調査及び本件各更正は、原告が町田民主商工会(以下「民商」という。)の会員であることを理由として、民商の組織に対する攻撃、破壊を目的としたものである。

(三) 推計課税の必要性の欠如

推計課税は、適法な税務調査に対して当該納税者が非協力であるなどにより、実額課税ができないというやむをえない理由がある場合に限って、例外的に許容されるものである。

本件において、原告は調査に協力していたが、金子係官の反面調査が前記(一)(4)の要件を欠く違法なものであることについて、文書による謝罪を要求したところ、同係官はこれを拒絶し、本件調査を打ち切って、推計課税に移ったものであって、誠実な調査がされておらず、推計の必要性に欠ける。

(四) 本件各更正の内容の過大

本件各更正は原告の総所得金額を過大に認定している。

3  よって、原告は、本件各更正及び本件各賦課決定の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2(一)のうち、(1)の主張(過少申告の疑いがなく、必要性がなかったこと)を争い、(2)は、金子係官の地位及び原告から調査理由開示要求があったことを認め、同係官がこれを拒否した事実を否認し、その余を争い、(3)は、調査の年月日、回数及び所要時間を認め、その余を争い、(4)は、金子係官が反面調査を行った事実を認め、反面調査不要(必要性及び補充性の欠如)の点を否認し、その余を争う。

以上の諸項目についての被告の主張は、後記抗弁1(一)ないし(三)のとおりである。

同2(二)は、本件調査の目的(他事考慮)を否認し、その余の主張を争う。この点に関する被告の主張は、後記抗弁1(四)のとおりである。

同2(三)は、推計課税が許容される要件についての主張及び原告が主張する謝罪要求があった事実を認め、原告が本件調査に協力した事実を否認し、その余を争う。この点に関する被告の主張は後記抗弁2のとおりである。

同2(四)の主張(過大推計)は争う。この点に関する被告の主張は、後記抗弁3のとおりである。

三  抗弁

本件各更正は、以下に述べるとおり適法である。したがって、本件各更正を前提とした本件各賦課決定もまた適法である。

1  本件調査手続の適法性

(一) 調査及び質問検査の必要性

所得税法二三四条に規定する「調査について必要があるとき」とは、調査の目的、調査すべき事項、申告等の体裁・内容、帳簿等の記入・保存の状況、事業の形態など諸般の具体的事情に鑑みて、客観的な必要性があると判断される場合をいうものである。そして、確定申告後に行われる所得税に関する調査については、適正・公平な課税の実現に資する質問検査制度の目的からみて、確定申告に係る課税標準又は税額が過少であるとの疑いがある場合だけでなく、広く申告の適否すなわち、申告の真実性を調査するために必要であると認められる場合もこれに該当するものである。

本件にあっては、次のとおり調査の必要性が認められるから、被告の調査は適法である。

(1) 原告の本件係争各年分の確定申告書には所得金額しか記載がなく、いずれも収入金額及び必要経費の記載がなかった(但し、昭和四四年分及び昭和四五年分については、それぞれ事業専従者控除額一五万円の記載だけはあった。)。

(2) 本件係争各年分の確定申告書には、八王子税務署長が事業所得を有する納税者に送付して、提出を求めていた事業所得に関する収支明細書(確定申告書に添付するもの)が添付されていなかった。

(3) 原告の右各申告所得額は、その営業店舗が原町田駅前にあり、スーパー・ダイエーの近くであるという立地条件等からみて、過少と認められた。

(4) 原告については、長期間、調査がされていなかったこと等から、八王子税務署長において右申告の真実性、正確性を調査する必要があると認められた。

(二) 調査の理由及び必要性の具体的内容の告知

調査の理由及び必要性の具体的、個別的な内容の告知は、質問検査権を行使するための法律上の要件ではない。したがって、調査担当者が、その調査に際してこれを告知しなかったとしても、当該調査がそれによって違法となるものではない。

それはそれとして、金子係官は、昭和四七年九月八日の調査の際、原告に対して、本件係争各年分の確定申告書に所得金額しか記載がないので、収入金額、仕入金額及び必要経費等について確認する必要がある旨を告げ、更に同月一八日及び二七日の各臨店時にも具体的な調査理由を告げている。

(三) 調査の時期、態様等の妥当性

金子係官が、原告の本件係争各年分の所得税の調査のため、①昭和四七年九月四日、②同月八日、③同月一八日、④同月二七日、⑤同年一〇月一一日、⑥同月二四日、⑦同月三一日、⑧同年一一月一四日、⑨同年一二月二一日、⑩同月二二日、⑪昭和四八年一月一一日、⑫同月一二日、⑬同月一六日(但し、原告は不在であった。)、⑭同月一九日、⑮同月二三日、⑯同月二六日、⑰同月二九日、⑱同年二月二日、⑲同月六日の計一九回原告店舗に出向いたのは事実である。

しかし、まず、調査日時の事前通知は、質問検査をするための法律上の要件ではないから、これがないからといって、調査あるいは質問検査が違法となるものではない。

しかも、右のうち、①は、原告の事業のありのまま知る必要から、事前の通知をしないで臨店したが、その後の②ないし⑤、⑩、⑫、⑭、⑯ないし⑲は、原告指定の日時などあらかじめ約束した日時に出向いたものであり、⑨、⑪は原告の休業日に臨店したものであり、それぞれ原告の営業になるべく差支えないように配慮してあった。

それにもかかわらず、右のように多数回の臨店を余儀無くさせられたのは、原告が調査に非協力であったことにもよるものである。すなわち、原告は、調査理由の詳細を開示するよう要求して調査に応じなかったり(右②、③)、多忙(右①、③、⑦、⑩、⑫、⑭)、所用(右⑨、⑪)、妹の病気(右④)など理由を設けて、その都度調査に応じられないと申し立て、金子係官はやむなく次回の調査を約束させて辞去するほかなかった。しかも、あらかじめ日時を約束して臨店しても、原告は、民商事務局員の須永、谷川らを立ち会わせて、調査の円滑な遂行を妨げ(右②ないし⑥、⑧、⑫、⑮ないし⑲)、反面調査以後は、反面調査をしたことについて謝罪文を要求して、調査に応じなかった(右⑱、⑲)ものである。

(四) 反面調査の必要性

反面調査も税務調査の一態様であるから、その必要性については前記(一)で述べたところと異ならない。

すなわち、国税通則法二四条、所得税法二三四条一項は、税務職員が更正等の処分を行うに際して、税務調査としての質問検査をなしうる旨を規定しているが、右質問検査の範囲、時期、程度、場所等の細目については実定法上は何ら規定を設けていないことに鑑みれば、質問検査の必要性と相手方の私的利益との比較衡量において社会通念上相当と認められる範囲内である限り、当該税務職員の合理的な選択に委ねられているものである。したがって、反面調査は、納税者の同意を要件とするものではなく、また、納税者自身に対する調査だけでは課税標準及び税額を把握できない場合に限って、その限度で、いわゆる補充性の要件のもとでのみ許容されるものではないから、納税者自身に対する調査の結了をまたないで反面調査をしても適法であり、それが社会通念上相当な範囲、方法において実施される限り、違法ではない。

のみならず、本件の臨店調査においては、原告の協力がなく、また、原告の記帳も完備しておらず、原告から提示された資料のみでは売上金額すら確認できなかったから、同売上金額の確認のためにやむをえず反面調査を実施したものであって、必要性の要件を備えており、調査は相当であった。

2  推計の必要性

租税は実額課税を原則とするが、納税者がその収支を明らかにできる帳簿書類等の正確な資料を備え付けていないとき、備え付けてある帳簿書類等の資料が不正確なとき、あるいは納税者が調査に非協力的であるときは、その所得金額を実額で算定することは不可能であるから、例外的に推計によって課税標準額を認定し、更正又は決定することができることとされている(所得税法一五六条)。

金子係官が本件係争各年分の収支明細書、帳簿、領収証等の提示を求めたのに対して、原告は、前記1(三)のとおり非協力的な態度に終始し、僅かに、同⑤において領収証等の一部を、同⑥において自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)の申込書控を、同⑦において仕入に関する領収証を、同⑫において昭和四五年分の自賠責保険申込書控を、それぞれ提示、貸与し、また、同⑰において仕入金額の合計表を提示したのみであって、前記(一)の収支明細書はもちろん、売上帳、仕入帳、経費帳、現金出納帳等の提示は一切なかった。

原告が提示した右の断片的な資料だけでは原告の本件係争各年分の所得を実額で把握することは不可能であったが、原告のこれ以上の協力は得られないと認められたので、八王子税務署長は本件推計課税を行ったものであり、その必要性があったことは明らかである。

更に、本件係争各年分の中古車売上金額及び売上原価(仕入額)について推計の必要性があったことについて詳述すると次のとおりである。

原告は、五回目の臨店調査に至ってようやく中古車売上の資料として昭和四六年分のうち三〇台計二六一万〇九〇〇円に関する領収証控を提示したのみで、前述の非協力的な態度を変えなかったし、提示された右領収証控に基づく中古車下取台数は中古車販売台数と一致せず、その不一致の理由について明確な説明が得られなかったので、右領収証控の金額が原告の当該年分の中古車売上の全てを示しているとは即断できない状況にあり、かえって、車両の販売に付随して行われる自賠責保険契約の締結件数から新車分の同締結件数を差し引いた件数と対比すると、右領収証控によって把握できる中古車売上台数は過少と認められた。

なお、原告は、本訴においても取引の全てを示すだけの基礎資料(現金出納帳、預金出納帳、在庫受払帳、領収証、領収証控等)を提出していない。僅かに、購入契約書を本訴で提出したが、その提出には原告の恣意が窺われるだけでなく、同契約書等を検討すると、本件係争各年分の原告の中古車売上及び仕入は原告主張分以外にも存在することが窺われ、結局、右契約書は、原告の売上金額の下限を証明するものではあっても、実際の売上金額の全部を証明するものではない。

3  総所得金額の算出根拠

原告の本件係争各年分の総所得金額(事業所得の金額)及びその算出根拠は、別表二記載のとおりであり、そのうち主要な項目の内容については以下に述べるとおりであって、本件各更正に係る総所得金額はいずれも右算出金額の範囲内であるから、本件各更正は適法である。

(一) 昭和四六年分

(1) 二輪新車売上金額及び四輪新車売上金額

別表二の順号1及び2記載のとおりであるが、同各金額には、自賠責保険料は含まれていない。

すなわち、右各金額も原告の提示した前記領収証控によって把握されるが、同自賠責保険料は、大東京火災海上保険株式会社(以下「大東京火災海上」という。)が同社名義の領収証を発行して領収しているものであり、原告の収入となるものではなく、原告の預かり金にほかならない。したがって、前記提示された領収証控の本体に当たる領収証には原告の収入となる売上金額が記載されるものであって、車両売上金額と右自賠責保険料とを合わせて領収証を発行することは考えられないからである。

(2) 中古車売上金額

次のア及びイの合計七九三万六四六〇円(別表二の順号5)である。

ア 別表三記載の売上金額計二六一万〇九〇〇円

別表二の順号5のうち実額部分に相当し、台数は三〇台である。右(1)と同様の理由によって、同金額には自賠責保険料は含まれていない。

イ 中古車売上の推計額五三二万五五六〇円

原告が昭和四六年中に、大東京火災海上の保険代理店として自賠責保険契約を締結した一六九件及び顧客に代わって町田市役所又は相模原市役所に車両のナンバープレート(車両番号の指定申請に基づく車両番号標)を代理申請した五九件の合計二二八件から重複等の理由で除外するのが相当と認められる以下①ないし④計一九一件を差し引いた三七件、すなわち二輪車二四台、四輪車一三台は同年分の原告の販売と推定される。

① 右保険契約の代理申請とが重複する四九件

② 右(1)の新車販売又は右アの中古車販売に伴う自賠責保険契約又は代理申請分である一〇〇件

③ 昭和四四年中又は昭和四五年中に自賠責保険契約又は代理申請したものを昭和四六年中に更新したこと等による保険契約分である二八件

④ 原告本人分あるいは中途解約等の理由により中古車販売から除外するのが相当である保険契約又は代理申請分である一四件

そこで、右二輪車及び四輪車ごとの各推定販売台数を、右アの二輪中古車の平均売上単価八万一〇六五円(別表三のうち順号30を除いた二九台の売上金額の平均値)及び同四輪中古車の売上単価(別表三の順号30の売上金額)にそれぞれ乗じた金額である一九四万五五六〇円及び三三八万円(合計五三二万五五六〇円。別表二の順号5のうち右アの金額を控除した額である。)が原告の昭和四六年分の中古車売上金額と推計される(この推計の合理性については後記4参照)。

(3) 中古車の売上原価

次のア及びイの合計五七〇万一七四二円(別表二の順号12)である。

ア 一八七万五八六〇円

右は、別表四記載の仕入金額の合計一九〇万七二六〇円に期首中古車在庫二万八〇〇〇円を加算し、期末中古車在庫五万九四〇〇円を減算したものである。

イ 三八二万五八八二円

右アの仕入原価に対応する中古車売上金額二六一万〇九〇〇円(前記(2)アの金額)から算定された原価率七一・八四パーセントを、前記(2)イの中古車売上推計額五三二万五五六〇円に乗じたものである。

(4) 一般経費

次のアないしサの合計二〇五万〇一八二円(別表二の順号15)である。

ア 租税公課 一一万二六〇〇円

イ 水道光熱費 六万四九八〇円

ウ 通信費 一〇万四二七九円

エ 広告宣伝費 五一万六一三九円

オ 修繕費 二万九五九八円

カ 消耗品、工具及びガソリン代 三四万四三九七円

キ 減価償却費 二〇万九五八三円

ク 支払手数料 二二万五三〇〇円

ケ 事務費 四万四九五〇円

コ 取得税 二三万〇八五〇円

サ 保険料 一六万七五〇六円

(5) 雇人費

上川英夫及び小山田広二に対する昭和四六年分の給与の合計額一一〇万円(別表二の順号17)である。

なお、右以外に同年中のみ特にアルバイトを必要とした事情は認められない。

(6) 下取車納入益

別表二の順号24の一六万七四六〇円である。これは、原告が本田技研工業株式会社神奈川営業所(以下「本田技研」という。)、ホンダ自販株式会社(以下「ホンダ自販」という。)及び東京マツダ町田販売株式会社(以下「東京マツダ」という。)に下取車を納入したことによる納入益であり、下取車納入額合計一四一万二三八〇円から下取車下取価額一二四万四九二〇円を控除した額である。

(二) 昭和四五年分

(1) 中古車売上金額

次のアの中古車売上推定台数六六台(全て二輪車)を基にして、その売上金額を次のイの推定売上単価九万四九〇七円によって推計した六二六万三八六二円(別表二の順号5)である。

ア 原告が昭和四五年中に大東京火災海上の保険代理店として自賠責保険契約を締結した一三二件並びに顧客に代わって町田市役所又は相模原市役所に前記(一)(2)イと同様にナンバープレートの指定を代理申請した四五件の合計一七七件から重複等の理由で控除するのを相当と認めた次の①ないし⑤の計一一一件を差し引いた六六件、すなわち六六台(全て二輪車)は同年分の原告の販売と推定される。

① 右保険契約と代理申請とが重複する四〇件

② 多摩ホンダ販売株式会社(以下「多摩ホンダ」という。)から仕入れた二輪新車一九台及び本田技研から仕入れた四輪新車一台の販売に伴う保険契約又は代理申請分である二〇件

③ 昭和四四年中に自賠責保険契約又は代理申請したものを昭和四五年中に更新したこと等による保険契約分である二二件

④ 原告本人分その他の理由により中古車販売から除外するのが相当と認められる保険契約又は代理申請分二件

⑤ 新車の販売分に係るものと認められる二七件(その仕入先ごとの内訳は、ホンダ自販から二輪新車二台、東京スズキ販売株式会社(以下「東京スズキ」という。)から同七台、多摩ホンダから四輪新車一台、本田技研から同一〇台、東京マツダから同七台)

イ 昭和四六年分の二輪新車一台の平均売上単価は一三万七一九〇円(別表二ノ順号1の売上金額一〇八三万八〇一一円をその販売台数七九で除した額)であるから、前記(一)(2)イの二輪中古車の平均売上単価八万一〇六五円は右の五九・〇八パーセントに当たる。

そこで、昭和四五年中の二輪新車一台当たりの平均売上単価一六万〇六四三円(別表二の順号1の売上金額六四二万五七四八円を販売台数四〇で除した額)に右昭和四六年分の二輪新車・中古車単価比を乗じて、昭和四五年分の二輪中古車の平均売上単価を九万四九〇七円と推定した(この合理性については後記4参照)

(2) 修繕収入金額

次のア、イを合計した一七三万五六八九円(別表二の順号6)である。

ア 外注費から推計される修繕収入金額四四万一二九一円

昭和四五年分の原告の外注費は六社合計で四〇万一二九一円(別表二の順号20)であるが、本件調査において原告の申し立てたところによれば、外注費に対する修繕収入の割合は一一〇パーセントである。したがって、右外注費にこの修繕収入割合を乗じた四四万一二九一円は昭和四五年分の修繕収入金額となる。

イ 修繕収入原価から推計される修繕収入金額一二九万四三九八円

昭和四五年分の原告の修繕収入の原価(修繕用部品の消費高)は一七二万〇八八三円(別表二の順号6)であるが、そのうち二輪車及び四輪車の販売原価を構成する(同車両の販売に際し架装した部品をいう。)と認められる次のAないしD計一〇六万三一九九円を控除した本来の修繕収入の原価は六五万七六八四円である。

本件調査において原告の申し立てたところによれば、本来の修繕収入に対する修繕収入の原価率は五〇・八一パーセントであるから、右六五万七六八四円をこの原価率で除した一二九万四三九八円も昭和四五年分の修繕収入金額となる。

A 二輪新車販売に際して、その架装に要したと認められる部品金額

原告の昭和四六年分の二輪新車販売総数は七九台であったが、そのうち顧客の注文により部品を架装して販売したもの(部品架装車両販売台数)は四八台であり、二輪新車で部品を架装(取り付け)して販売した割合は右総販売台数の六〇・七五パーセントとなる。したがって、これを昭和四五年分の二輪新車販売総数四〇台に乗じた二四・三台が、当年の部品架装して販売した二輪新車台数と推定される。

昭和四六年分の右架装(取り付け)した部品の総価格(販売高)は二八万六九〇〇円であったが、その原価は、右部品の販売差益率二〇・三三パーセントに相当する額を控除したものであるから、総額二二万八五七三円となり、右昭和四六年分の架装販売二輪新車一台当たりの平均額は四七六一円と算定される。そこで、この平均単価に基づいて、昭和四五年分の右架装販売二輪新車二四・三台の架装部品の原価を計算すると、一一万五六九二円と認められる。

B 四輪新車販売に際して、その架装に要したと認められる部品金額

同様にして、昭和四六年分の四輪新車の販売総数一七台のうち部品架装車両販売数一四台の占める割合は八二・三五パーセントであるから、昭和四五年分の四輪新車販売総数一九台のうち部品架装車両販売台数は、右割合に従って一五・六四台と推定される。

そして、昭和四六年分の右架装部品の総価格は二六万一一〇〇円であり、右Aの部品販売差益率二〇・三三パーセントによって算出したその原価は総額二〇万八〇一八円、その一台当たりの原価は一万四八五八円となるから、これによって昭和四五年分の右四輪新車一五・六四台の架装部品の原価を計算すると二三万二三七九円となる。

C 中古車販売に際して、その架装に要したと認められる部品金額

昭和四六年分の中古車販売総数六七台のうち部品架装車両販売数一二台の占める割合は一七・九一パーセントであるから、昭和四五年分の中古車販売総数六六台のうち部品架装車両販売台数は、この割合を適用して一一・八二台と推定される。

そして、昭和四六年分の右架装部品の総価格は一五万八一五〇円であり、右Aの部品販売差益率二〇・三三パーセントによって算出したその原価は総額一二万五九九八円、その一台当たりの原価は一万〇四九九円となるから、これによって昭和四五年分の右中古車一一・八二台との架装部品の原価を計算すると一二万四〇九八円となる。

D 中古車販売総台数についての手直し用架装部品金額

前記のとおり、昭和四六年分の中古車販売総数は六七台であり、その販売に際して手直しに要した架装部品の金額は六〇万円であるから、その一台当たりの金額は八九五五円となる。

そうすると、昭和四五年分の中古車販売総数は前記のとおり六六台であるから、右八九五五円を基にして、右六六台の手直しに要した架装部品の金額を推計すると、五九万一〇三〇円となる。

(3) 中古車売上原価

前記(1)のとおり、昭和四五年分中古車売上金額は六二六万三八六二円であるから、これに昭和四六年分の中古車売上原価率七一・八四パーセント(前記(一)(3)イ)を適用して、四四九万九九五八円(別表二の順号12)と推定される。

(4) 一般経費

昭和四五年分の総収入金額は二六二五万五一三〇円(別表二の順号7)であるから、これに昭和四六年分の経費率六・六五パーセント(昭和四六年分の総収入金額三〇七八万四八八〇円に対する同年分一般経費二〇五万〇一八二円の割合)を適用して、一七三万九三一六円(別表二の順号15)と推定される。

(三) 昭和四四年分

(1) 中古車売上金額

次のアの中古車売上推定台数四五台(二輪車三五台、四輪車一〇台)を基にして、その売上金額を次のイの推定売上単価六万八六七四円(二輪車)及び二九万五八六九円によって推計した五三六万二二八〇円(別表二の順号5。うち二輪中古車売上金額二四〇万三五九〇円、四輪中古車売上金額二九五万八六九〇円)である。

ア 昭和四四年中に原告が、大東京火災海上の保険代理店として自賠責保険契約を締結した四八件並びに顧客に代わって町田市役所又は相模原市役所に前記(一)(2)イと同様にナンバープレートの指定を代理申請した六一件の合計一〇九件から重複等の理由で控除するのを相当と認めた次の①ないし④の計六四件を差し引いた四五件、すなわち四五台(うち二輪中古車三五台、四輪中古車一〇台)は同年分の原告の販売と推定される。

① 右保険契約と代理申請とが重複する三件

② 多摩ホンダから仕入れた二輪新車二九台及び本田技研から仕入れた二輪新車一台の販売に伴ってされたものである保険契約又は代理申請分三〇件

③ 原告本人分と認められる保険契約又は代理申請分四件

④ 新車の販売分に係るものと認められる二七件(その仕入先ごとの内訳は、東京スズキから二輪新車一四台、本田技研から同一台、多摩ホンダから四輪新車二台、本田技研から同一台、東京マツダから同九台)。

イ 昭和四六年分の二輪新車一台の平均売上単価に対する同年分二輪中古車の平均売上単価の割合(新車・中古車単価比)は、前記(二)(1)イのとおり五九・〇八パーセントである。

また、同年分の四輪新車一台の平均売上単価五四万三九六二円(別表二の順号2の売上金額八七〇万三三九二円をその販売台数一六で除した額)に対する同年分の四輪中古車の売上単価二六万円(前記(一)(2)イ)の割合(新車・中古車単価比)は四七・七九パーセントである。

そこで、昭和四四年中の二輪新車一台当たりの平均売上単価一一万六二四〇円(別表二順号1の二輪新車売上金額七四三万九四〇六円をその販売台数六四で除した額)及び同四輪新車一台当たりの平均売上単価六一万九一〇三円(別表二の順号2の四輪新車売上金額七四二万九二三八円をその販売台数一二で除した額)に昭和四六年分の右二輪車及び四輪車の新車・中古車単価比をそれぞれ乗じて、昭和四四年分の二輪中古車の平均売上単価を六万八六七四円、同四輪中古車の平均売上単価を二九万五八六九円と推定した(この合理性については後記4参照)。

(2) 修繕収入金額

次のア、イの合計一一五万七一六三円(別表二の順号6)である。

ア 外注費から推計される修繕収入金額八一万一五八四円

昭和四四年分の原告の外注費七三万七八〇四円(別表二の順号20)に、前記(二)(2)アの修繕収入割合一一〇パーセントを乗じた額である。

イ 修繕収入原価から推計される修繕収入金額三四万五五七九円

昭和四四年分の原告の修繕収入の原価(修繕用部品の消費高)は九九万四九八四円(別表二の順号13)であるが、そのうち二輪車及び四輪車の販売原価を構成する(前記(二)(2)イ参照)と認められる次のAないしD計八一万九三九五円を控除した本来の修繕収入の原価は一七万五五八九円である。これを前記(二)(2)イの原価率五〇・八一パーセントで除した三四万五五七九円も昭和四四年分の修繕収入金額となる。

A 二輪新車販売に際して、その架装に要したと認められる部品金額

原告の昭和四四年分の二輪新車販売総数は六四台であったが、これに、前記(二)(2)イAと同様に、二輪新車の部品架装販売台数割合六〇・七五パーセントを乗じた三八・八八台が、当年の部品架装して販売した二輪新車台数と推定される。

これを、前記(二)(2)イAの昭和四六年分の架装販売二輪新車一台当たりの架装部品の原価の平均額四七六一円に乗じた一八万五一〇七円が右金額である。

B 四輪新車販売に際して、その架装に要したと認められる部品金額

同様にして、昭和四四年分の四輪新車の販売総数は一二台であるから、これに前記(二)(2)イBの昭和四六年分部品架装車両割合八二・三五パーセントを乗じた九・八八台が昭和四四年分の部品架装四輪新車と推定される。

これに、前記(二)(2)イBの昭和四六年分の四輪新車一台当たりの架装部品平均原価一万四八五八円を乗じると、昭和四四年分に販売した四輪新車の架装部品の原価は一四万六七九七円と推計される。

C 中古車販売に際して、その架装に要したと認められる部品金額

昭和四六年分の中古車販売総数に占める部品架装車両販売数の割合は、前記(二)(2)イCのとおり一七・九一パーセントであるから、昭和四四年分の中古車販売総数四五台(前記(三)(1)ア参照)のうち部品架装車両販売台数は、この割合を適用して八・〇五台と推定される。

そこで、昭和四六年分の右架装部品の一台当たりの平均原価一万〇四九九円(前記(二)(2)イC参照)を用いて昭和四四年分の右中古車八・〇五台の架装部品の原価を算定すると八万四五一六円となる。

D 中古車総販売台数についての手直し用架装部品金額

前記(二)(2)イDのとおり、昭和四六年分の中古車販売に際して手直しに要した架装部品の一台当たりの金額は八九五五円である。

これによって、昭和四四年分の中古車販売総数四五台の手直しに要した架装部品の金額を推計すると、四〇万二九七五円となる。

(3) 中古車売上原価

前記(1)の昭和四四年分中古車売上金額五三六万二二八〇円に基づいて、昭和四六年分中古車売上原価率七一・八四パーセント(前記(一)(3)イ参照)を適用して、当年分の中古車売上原価を三八五万二二六一円(別表二の順号12)と推計した。

(4) 一般経費

総収入金額二一七四万六五八三円(別表二の順号7)に昭和四六年分の経費率六・六五パーセント(前記(二)(4)参照)を適用して推計した。

4  本件推計の合理性

(一) 原告は、オートバイ等の販売及び修理業のほか大東京火災海上の自動車保険の代理店を営んでおり、また、オートバイ等の販売に際してはナンバープレートの代理申請をも行っている。

原告が取り扱った自賠責保険契約には、原告の新車及び中古車の販売に伴って顧客(車両購入者)が新規契約したものと従前の保険契約の更新とがあるが、いずれにしても、自賠責保険契約やナンバープレートの代理申請は、車両の販売に付随するものであり、いわば顧客に対するサービスとして行うものであって、車両の販売を伴わない保険契約や代理申請のみであることは一般に希有のことである。

そこで、被告は、前記3(一)(2)イ、(二)(1)及び(三)(1)のとおり、本件係争各年中の原告の取扱に係る自賠責保険契約件数及び原告の営業がある町田市とこれに隣接する相模原市の両市役所にしたナンバープレート指定の代理申請件数を合わせた件数を基礎に、これから両者の重複件数のほか保険契約の更新分(車両の保険期間は大部分が一年であり、ときに二年がある程度である。)、新車販売に伴う分及び本人分など中古車販売と認められない分の件数を除いた件数をもって、原告の当該年分の中古車販売台数と認定し、これに実額による一台当たりの平均販売価格を乗じて、中古車売上金額を推計したものである(以下「本件推計方法」という。)。

仮に、原告が車両の販売を伴わない保険契約又は代理申請(ナンバープレート指定の代理申請を指す。以下同じ。)をも行っていたとしても(この場合は、他業者の販売に係る車両の保険契約や代理申請をしたことになる。)、このことは、他方で、原告の販売に係る車両の保険契約や代理申請を顧客が他業者に依頼する事実があることを物語っているから、彼此相殺されて、結局、車両の販売を伴わない保険契約又は代理申請の件数を考慮しないでも、本件推計方法に不合理性はない。

(二) 本件推計方法は、次にのべるとおり、原告の中古車販売台数、その売上金額の最低値を把握したに過ぎない。

(1) 自動車検査証いわゆる車検証の有効期間と自賠責保険の保険期間とは重複している(自賠法九条二項)から、中古車販売において車検証の有効期間内に車両を購入した顧客(新所有者)は、旧所有者が契約した自賠責保険の契約が解約されず存続しているかぎり、その保険を当該車両と共に引き継ぐことができ、この場合は契約当事者の名義の変更で足りる。

ところが、本件推計方法の基礎となった原告取扱の自賠責保険の契約件数は、新規契約分と更新分のみであって、右の名義変更は計上されていない。

(2) 一般に、原動機付自転車いわゆる原付車など車検を義務付けられていない車両の自賠責保険又は農協共済への加入率(以下「付保加入率」という。)は、昭和四七年三月末現在で五四パーセントであったから、本件係争各年分の同付保加入率もこれと大差なく、五〇パーセント程度と考えられる。

そうすると、二輪中古車販売台数を、主に自賠責保険契約件数に基づいて推計することは、右の付保加入率を考慮すれば、農協共済分を含めても総売上台数の約二分の一しか把握できないことになり、本件推計方法による被告主張の中古車売上台数は内輪でこそあれ過大にわたることはありえない。

原告その他同業者が原付車を販売する際、自賠責保険を付する割合が前記数字より高いとしても、それは新車の販売についてであって、中古車の販売に際して自賠責保険を付する割合は、ナンバープレートの申請が不要であることに鑑みれば、かなり低いとみるのが相当である。

なお、自賠責保険に加入していない原付車等で、実際には廃車同然になっているのに廃車手続をとっていない例がたまにあるかも知れない(この場合、右付保加入率が実際より高く現れることになろう。)が、そのような例は稀であり、それが五〇ないし五四パーセントを占めるなど到底ありえないことである。なぜなら、原付車の所有者に対しては毎年四月一日を賦課期日として軽自動車税が賦課される(地方税法四四二条の二第一項、四四五条一項)から、現実には廃車同然になって使用しないのに、廃車手続をとらないで引き続き右税の負担を甘受するということは通常考えられないことだからである。車両買い替えの場合でも、新に取得した車の登録と不要になった旧車両の登録抹消とは販売業者等を介して同時に行われるのが通常と考えられるから、廃車手続のとられない事実上の廃車という事態は生じないと言える。

(3) 本件推計方法の基礎とした原告のナンバープレートの代理申請件数は、町田市及び相模原市が取り扱う軽自動車税に係るもののみで、軽自動車以外の車両の申請件数は計上されていない。これに加えて、原告の顧客は右両市だけでなく東京都渋谷区、八王子市、横浜市緑区、同保土ヶ谷区、神奈川県座間町(現座間市)など広範囲に及ぶが、右両市以外の原告によるナンバープレートの代理申請件数も全く計上されていない。

(4) 本件係争各年分当時、名義書替えのみで車両を販売した場合の自動車税の日割分(残存日数に対応する額)及び自賠責保険料の残存期間相当額は、これを買主から受領しても、通常、販売業者の収入とする取扱であったが、これも原告の収入(事業に係る雑収入)に計上されてない。

(三) 以上のとおり、本件推計方法は、推計の基礎事実自体が確実に把握されていること(むしろ、これ以外にも計上すべき事実があることは前述のとおり)、契約更新や新車販売等の減算項目を考慮していること、一台当たりの平均売上単価は原告の自認する実額に基づいていること、この方法に優る推計方法はないこと等に照らし、その合理性が肯定されるべきである。

四  抗弁の認否及び反論

1  抗弁1(本件調査手続の適法性)について

(一) 抗弁1(一)は、(1)の事実を認め、(2)のうち確定申告書に収支明細書の添付がなかったことを認め、(3)の事実を否認し、その余を争う。

原告が本件係争各年分の確定申告書に所得金額のみ記載し、かつ、収支明細書を添付しなかったのは、昭和三七年分ないし同四三年分と同じく税務相談における八王子税務署職員の指導に従ったからに過ぎない。

原告の店舗は、駅利用者や買物客などの人通りが少ない所にあり、立地条件で劣り、かつ、営業内容において原告と比較できる同業者は八王子税務署管内には存在しなかった。

(二) 同(二)は、金子係官が昭和四七年九月八日原告に対して収支経費の明細を確認に来た旨告げた事実を認め、同月一八日及び同月二七日の臨店の際に調査理由を告げた事実を否認し、その余を争う。

(三) 同(三)は、金子係官の昭和四八年一月一六日臨店の事実は不知、その余の一八回の臨店、そのうち①は事前の通知がないこと、⑨及び⑪が原告の休業日であったこと、②及び③の際、原告が調査理由の開示を要求したこと、①、③、⑩及び⑭の際、原告が多忙である旨申し立てたこと、②、④ないし⑥、⑧、⑫及び⑮ないし⑲の際、民商事務局員須永、谷川らが立ち合ったこと並びに⑱及び⑲の際、原告が金子係官の反面調査について文書による謝罪を要求したことをいずれも認め、その余の事実を否認し、法律上の主張については争う。

(四) 同(四)の事実は否認し、法律上の主張は争う。

2  抗弁2(推計の必要性)について

抗弁2は、原告が、⑤の際、経費に関する領収証及び売上に関する領収証控(但し、一部ではなく全部)を、⑥の際、自賠責保険申込書控を、⑦の際、仕入に関する領収証を、⑫の際、昭和四五年分の自賠責保険申込書控を、それぞれ提示、貸与したこと並びに⑰の際、仕入金額の合計表を提示したことを認め、その余は争う。

右のほか、原告は⑥の際、仕入(下取を除く。)に関する領収証の全部を提示し、これによって、金子係官から提示を求められた原告所持の資料は、購入契約書を除き全て提示済みである。

そして、①から④までは調査理由の開示を金子係官が拒絶し、結局調査に入らなかったもので、その責任は同係官にある。その後、原告が譲歩して調査に入り、⑤から⑦までは右のとおり資料の提示、貸与に応じ、⑧の際は、資料が存在しない修繕収入について原告が説明し、了解に達した。⑨から⑭までは年末の最も多忙な時期であり、事前の通知もなく(但し、⑫を除く。)連続的に臨店したので、調査に応じられなかったのは当然である。⑮から⑰までは毎回の長時間の調査に協力した結果、残された問題は中古車の売上の点と車両売上金額に自賠責保険料が包含されているか否かの点のみとなった。そこで、原告は、次回までに中古車の売上を一覧表にして提示することを約したが、⑱及び⑲において、金子係官が違法な反面調査の謝罪を拒み、予定された調査に入れず、原告において作成済みの中古車一覧表も提示しなかったものである。

右のとおり、本件調査を中途で打ち切った責任は同係官にある。

3  抗弁3(総所得金額の算出根拠)について

(一) 別表二記載のうち次の各項目を認める。

本件係争各年分について、自転車及びタイヤの各売上金額(順号3及び4)、二輪新車、四輪新車、自転車及びタイヤの各売上原価(順号8ないし11)、修繕収入の原価(順号13)、支払家賃地代、支払利息及び外注費(順号18ないし20)、リベート収入及び損害保険代理報酬(順号22及び23)、事業専従者控除額(順号26)

昭和四四年分及び昭和四五年分について、二輪新車及び四輪新車の各売上金額(順号1及び2)、雇人費(順号17)

昭和四六年分について、修繕収入金額(順号6)

(二) 昭和四六年分(抗弁3(一))について

(1) 抗弁3(一)(1)(二輪新車売上金額及び四輪新車売上金額)の事実は否認する。もっとも、別表二順号1及び2の各金額は、自賠責保険料が含まれているものとして認める。

右各金額、したがって原告が車両を販売した際に発行する領収証記載の金額には、自賠責保険料のほか支払手数料(ナンバープレートの登録・下付に要する実費)等の実費分が含まれている。そのうち右支払手数料については、被告も一般経費となることを認めており、これと同様に自賠責保険料も一般経費として右金額から控除すべきである。

(2) 同(2)(中古車売上金額)は、アの事実を否認し、イを争う。

中古車売上金額は、自賠責保険料を含んだものとして、別表五記載のとおりである(合計三六七万七四五〇円)。

右自賠責保険料は、一般経費として収入から控除されるべきである。

(3) 同(3)(中古車売上原価)は争う。

中古車売上原価は、別表六記載のとおりである(合計二八九万六一八〇円)。

(4) 同(4)(一般経費)の各経費額及びそれが一般経費となることは認める。

右のほか、前記(1)及び(2)のとおり車両売上金額に含まれている自賠責保険料も一般経費として控除されるべきであり、その金額は、別表七記載のとおりである(合計八二万二一〇〇円)。

したがって、一般経費は合計二八七万二二八二円である。

(5) 同(5)(雇人費)の各給与額は認める。

右のほか、原告はアルバイトに対して計一八万円を支払っており、雇人費の合計は一二八万円である。

(6) 同(6)(下取車納入益)は否認する。

下取車納入は中古車の売上として、その下取自体は中古車の仕入として、それぞれ計上済みであるから、右納入益を収入金額に計上すべきではない。

したがって、雑収入金額は六八万二六一一円である。

(7) 以上のとおりであるから、昭和四六年分の事業所得は一六四万〇一七七円が正しい。

(三) 昭和四五年分(抗弁3(二))について

(1) 抗弁3(二)(1)(中古車売上金額)は争う。

中古車売上金額は、別表八記載のとおりである(合計二九四万六五〇〇円)。

(2) 同(2)(修繕収入金額)は、アの外注費及びイの修繕収入原価を認め、その余を争う。

但し、修繕収入金額は、一六五万〇五二一円の限度で認める。

(3) 同(3)(中古車売上原価)は争う。

中古車売上原価は、別表九記載のとおりである(合計二五五万三二〇七円)。

(4) 同(4)(一般経費)は争う。

一般経費は、総収入金額二二七五万二六〇〇円を基に、これに昭和四六年分の経費率一一・一パーセントを乗じた二五二万五五三八円と推定すべきである。

(5) 以上のとおりであるから、昭和四五年分の事業所得は八一万七〇二三円が正しい。

(四) 昭和四四年分(抗弁3(三))について

(1) 抗弁3(三)(1)(中古車売上金額)は争う。

中古車売上金額は、別表一〇記載のとおりである(合計二三二万〇一三〇円)

(2) 同(2)(修繕収入金額)は、アの外注費及びイの修繕収入の原価を認め、その余を争う。

但し、修繕収入金額は、一〇七万一七八六円の限度で認める。

(3) 同(3)(中古車売上原価)は争う。

中古車売上原価は、別表一一記載のとおりである(合計二〇〇万四八三〇円)。

(4) 同(4)(一般経費)は争う。

一般経費は、総収入金額一八六一万九〇五六円を基に、これに昭和四六年分の経費率一一・一パーセントを乗じた二〇六万六七一五円と推定すべきである。

(5) 以上のとおりであるから、昭和四四年分の事業所得は九三万六七七二円が正しい。

4  抗弁4(推計の合理性)について

(一) 抗弁4(一)は、原告がオートバイ等の販売及び修理業を営み、傍ら大東京火災海上の自動車保険の代理店を営んでいること、オートバイ等の販売に際してナンバープレートの登録・下付の代理申請を行っていることを認め、車両の販売を伴わない保険契約や代理申請のみを行うことが希有であることは否認し、その余を争う。

同(二)は、冒頭の主張を争い、(2)の本件係争各年分の付保加入率が五〇パーセント程度であったことを認め、(2)のその余を争い、(4)の名義書替えのみで販売した場合の自動車税及び自賠責保険料の返還金等の金員が販売業者の収入となる取扱であったことを否認する。

同(三)は争う。

(二) 本件推計方法は、以下に述べるとおり合理性がない。

(1) 本件推計方法によって中古車販売台数が把握できるというためには、まず、被告主張の自賠責保険契約の更新分(当初の保険契約を原告が取り扱った場合の更新分)を除けば、自賠責保険契約又はナンバープレートの代理申請をした場合には必ず車両の販売が伴っていなければならない。

ところが、原告には、車両の販売を伴わないで、自賠責保険契約のみを取り扱った場合があるのは勿論、ナンバープレートの代理申請のみを行うことも件数は少ないながら存在した。すなわち、当初の自賠責保険契約をディーラーで直接取り扱った場合、他の業者から車両を購入した場合、他から車両を譲り受けた場合などのように、当初の保険契約を原告以外の者が取り扱ったときに、その更新等のみを原告が取り扱っている。

したがって、被告が中古車販売に伴うものと認定した件数の中には、自賠責保険契約やナンバープレートの代理申請のみの件数が含まれている。

(2) また、新車販売に伴う分及び過年度販売に係る更新分が完全に除外されなければならないところ、被告が中古車販売に伴うものと認定した件数(特に昭和四六年分)中には、新車販売に伴う分及び右更新分が含まれている。

(3) 本件推計方法の基礎資料に次のとおり誤りがあり、被告主張の保険契約の更新分(当初の保険契約を原告が取り扱った場合の更新)についても、完全な除去はできていない。

ア 右更新分を完全に除外するためには、保険期間が一年と二年の二通りあるから、最低二年間は遡って自賠責保険契約の締結状況を調査しなければならないのに、本件では昭和四四年分以降しか調査されておらず、昭和四四年分及び昭和四五年分の中古車売上金額については右更新分の除去が不完全である。

イ 昭和四四年分の自賠責保険契約件数四八件は、ナンバープレートの代理申請数六一件及び二輪と四輪の新車販売数七六台より少ない。しかし、自賠責保険契約件数の方がナンバープレートの代理申請件数より格段に多いはずであり、しかも、新車販売の大多数は保険契約を伴うのが常であるから、右四八件は明らかに過少であり、これは被告の調査不十分に因るものである。

したがって、昭和四五年分及び昭和四六年分の中古車売上金額については、右更新分の除去が完全になされていないものである。

(4) 付保加入率を根拠にして、本件推計方法に合理性があるとすることはできない。

すなわち、付保加入率は、登録全車両に関するものであって、業者が車両を販売する際に自賠責保険を付する割合を推定する資料となるものではない。原付車等の自賠責保険については、加入の意識が高くなく、また、不加入に罰則がなく、車検も義務付けられていないため、自賠責保険に当初は加入していても、保険期間が切れて放置され、更新しないことが往々にしてあり、これが付保加入率を引き下げる原因となっている。しかし、原告ら業者が原付車を販売する際には、罰則はなくとも、責任保険加入が強制されており、手数料を取得できることでもあり、自賠責保険を付さないことはない。他方、車両登録はしてあっても、実際は使用していないものが相当数あり(当時の原付車の軽自動車税は年額五〇〇円に過ぎず、煩瑣な廃車手続をとってまでこの負担を免れようとはしない者も多数あった。)、これが実働車両の割に付保加入率を低く見せる原因になっている。

(5) 中古車は、新車と異なり、使用年数・態様が様々であり、単なる平均値でその売上を推計するのは妥当でない。現に、昭和四五年分の二輪中古車売上金額の推計単価(九万四九〇七円)は昭和四六年分のそれ(八万一〇六五円)より一万三〇〇〇円強も高くなっており、昭和四四年分の四輪中古車の推計単価(二九万五八六九円)は昭和四六年分のそれ(二六万円)より三万六〇〇〇円弱高くなるなど、右中古車単価は区々であり、本件推計方法の不合理性は明らかである。

また、昭和四六年分の四輪中古車一三台の売上金額は僅か一台の売上金額(別表三の順号30)をそのまま推計単価としており、推計方法としても不合理である。

第三証拠関係《省略》

理由

一  請求原因一1(課税経緯)の事実は当事者間に争いがない。

そこで、本件各更正の適法性について判断する。

二  本件調査手続の適法性について

原告は請求原因2(一)(1)ないし(4)のとおり本件調査手続の違法性を主張する。

しかし、一般の税務調査にあっては、調査手続の違法は、それによって収集された資料が課税処分の資料として用いられた場合であっても(用いられなければ、課税処分と因果関係のない違法を言うことになり、主張自体失当である。)、当然にはこれに基づく課税処分を取り消す事由とはならず、その手続の違法性の程度が甚だしい場合に、これによって収集された資料を当該課税処分の資料として用いることが排斥されることがある(その結果として、当該処分を維持できなくなる場合が起こりうる。)に止まるものと解するのが相当である。

したがって、原告が主張する本件質問検査権の行使が必要性を欠くとの点、本件調査理由を開示しなかった点及び反面調査は必要性と補充性を欠くとの点は、いずれもその主張事実が認められ、その限りで本件調査手続が違法と評価されたとしても、本件課税処分を違法として取り消すべき事由とはならないし、また、右手続によって収集された資料が排斥されるべき程度にも至っていないから、主張自体失当である。

また、原告が主張する本件調査の態様・時期等の社会通念上の不当性について検討すると、まず、調査実施日時の事前通知は調査もしくは質問検査権行使の法律上の要件に当たらないから、これを欠いた臨店調査も違法ではない(事案によってはこの種の通知をしないで調査する必要があることさえ考えられる。)。次に、臨店調査の時期、回数及び所要時間については、《証拠省略》によれば、本件調査が前後一九回に及んだ(この事実は当事者間に争いがない。)のは、原告の十分な協力が得られなかったためであること、⑯の昭和四八年一月二六日に約七時間を調査に当てた(この事実も当事者間に争いがない。)のは、自賠責保険申込件数と売上台数との相違について一台ずつ突き合わせをした等のためであり、この席には民商事務局員谷川も立ち会っていたこと、年末年始の一二月二三日から一月一〇日までは調査は行われておらず、一二月二一日及び翌二二日は臨店したが多忙という原告の申し立てに従って、調査を見合わせていること、かくして、曲がりなりにも原告の所得の実額についての調査が進むかに思われたが、⑱の昭和四八年二月二日の臨店時に、民商事務局員須永が立ち会っている席上で原告は、原告の同意なしに金子係官が得意先について反面調査を行ったことに強く抗議し、謝罪の意を表した文書を作成して提出するよう要求し、これを断った同係官の調査を拒否したこと、更に⑲の同月六日、再び調査のため臨店した同係官に対して原告は、右⑱の日と同様に謝罪文の提出を強く要求し、これが容れられないかぎり、本件調査には応じられないと判断される態度に出たこと、そこで同係官もついに調査を断念したこと、この時点までに原告から提示あるいは貸与された資料は、昭和四六年分の経費と仕入に関する領収証、売上に関する領収証控及び新車の仕入金額の合計表並びに昭和四五年分及び昭和四六年分の自賠責保険申込書控のみであったことが認められる。《証拠判断省略》

右認定によれば、本件調査の時期、回数及び所要時間(原告主張のその他の日における三、四時間の調査はその回数及び時間からみて不当ではない。)は社会通念上相当な限度を超えてはおらず、適法な調査と言うべきである。

したがって、右の主張もまた失当である。

三  原告は、本件調査及び本件各更正は民商の組織の破壊を目的としたものであると主張するところ、原告が民商の会員であることは《証拠省略》によって認めることができる。

しかし、本件調査及び本件各更正は本来、原告の本件係争各年分の所得を正確に把握して、原告の負うべき租税額を確定しようとするものであることは明らかなところ、この本来の目的を離れて、原告が右に主張するような意図に出た調査であることについては、これに沿う須永証言はたやすく採用できず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

四  そこで、推計の必要性について判断する。

本件各更正が、本件推計方法を採用して原告の所得を算定したものであることは、当事者間に争いがない。原告は、本件において原告も調査に協力しており、実額課税が可能であったにもかかわらず、係官が反面調査について謝罪要求を拒否し、一方的に調査を打ち切って、実額課税を怠ったものと主張する。

しかし、本件において、反面調査を含む質問検査等の調査手続に違法もしくは権利の濫用がなかったことは前記各認定のとおりである。すなわち、金子係官が前後一九回もの臨店を余儀なくされたのは、前述のとおり、原告の十分な協力が得られなかったことに基因するものであり、反面調査について、原告が同係官に対して抗議し、かつ、文書による謝罪を求めることは適法な根拠を有しない行為であって、これを拒否した同係官の措置にもまた違法はないと認められる。したがって、原告が右謝罪文の提出に固執して、これが容られないかぎり以後の調査には応じないと判断される態度に出たものである以上、金子係官がそれ以上の説得を断念し、本件調査を打ち切ったことは、本件調査のそれまでの経緯及び大量の課税案件を適正かつ迅速に処理することが要請さる税務行政の目的に鑑みてやむをえない措置であり、これにもなんら違法なかどはないと言うべきである。

そして、本件調査の過程で原告から提示あるいは貸与された資料は、前記二で認定したとおり、昭和四六年分の経費と仕入に関する領収証、売上に関する領収証控及び新車の仕入金額の合計表並びに昭和四五年分及び昭和四六年分の自賠責保険申込書控に止まったものである。

そうであれば、これに前記反面調査の結果を加えても、本件係争各年分の原告の所得を計算するに必要な別表二記載の各項目全てについて、その実額を把握することは到底不可能であることは明白であるから、原告のこれ以上の協力が期待できない事情の下では、実額を確定できない各項目については推計による算定を行い、その結果を下に、本件各更正を行う必要性があったものと認められる。

五  総所得金額(事業所得)について

1  別表二のうち当事者間に争いがない項目及び金額

別表二記載の各項目のうち、抗弁の認否及び反論3(一)摘示の各項目は、同摘示の各年分の金額につき当事者間に争いがない。

2  昭和四六年分の二輪新車及び四輪新車の各売上金額

別表二記載の右各金額については、これに自賠責保険料が含まれているか否かの点を除いて、当事者間に争いがない。そこで、右争点について判断する。

(一)  《証拠省略》によれば、別表二記載の昭和四六年分の二輪新車売上金額は、本件調査において原告から提示を受けた前記領収証控から二輪新車売上分として把握できた金額(実額)に、本件各更正に関する審査請求の調査担当者が他の二輪新車売上分として把握した金額を加算したものであるところ、同金額には自賠責保険料が含まれていること、なお、右領収証控のうち中古車売上に関するものについても、その売上金額には自賠責保険料が含まれていることが認められる。

(二)  被告は、抗弁3(一)のとおり、右領収証控の金額に自賠責保険料が含まれているはずがないと主張する。しかし、原告が発行した右領収証控(その領収証本体も同様と推定される。)は、本来ならば自賠責保険料と同様に預かり金であって原告の収入とはなりえないはずのナンバープレートの登録・下付に要する実費、すなわち本件における支払手数料及び取得税に相当する金額を売上金額に含め、一括した金額を記載していたことは、被告も認めているところである(被告も、この部分については経費性を認め、領収証控の売上金額からこれを除外して、一般経費中の支払手数料の項目に計上している。)。そして、現実に受領した金額を証明する意図で、売上金額と預かり金とを内訳に区別して記載することを省略して、両者を一括した金額のみを記載した領収証を発行する例は、世間でもときに行われるところである。してみれば、右領収証控記載の売上金額に、本来の売上金以外に預かり金である自賠責保険料が含まれていたとしても格別背理と言えないことは明らかである。

もっとも、自賠責保険料について、大東京火災海上名義の領収証が別に発行されている(次の認定参照)ことは被告主張のとおりである。しかし、《証拠省略》によれば、大東京火災海上名義で発行される領収証は、自賠責保険加入申込書や証明書などと一綴りになった用紙の一部で、代理店である原告が自賠責保険加入手続の書類を作成する際におのずと作成されるものであることが認められる。してみると、前記認定の基となった各証拠及び本件領収証控は支払手数料の預かり金も一括した金額を記載していた事実と対比し、勘案すれば、右領収証の存在だけで直ちに前記認定が左右されるものでないことは明らかである。

金子証言のうち前記認定に反する部分は採用できず、他にこの点について被告の主張を認めるに足りる証拠はない。

(三)  《証拠省略》によれば、別表二記載の昭和四六年分の四輪新車売上金額は、同年中に原告が四輪新車を販売した際に作成された購入契約書に記載の契約代金額を合計した額であるが、同金額には自賠責保険料、取得税、その他諸手数料が含まれていることが認められ、この認定を左右する証拠はない。

以上のとおり、別表二記載の昭和四六年の二輪及び四輪の各新車売上金額は自賠責保険料を含むものであるから、本来の各新車売上金額を把握するためには、右自賠責保険料の額を確定して、これを控除しなければならない筋合であり、この理は、一般経費として計上されるべきことに争いがない前述の支払手数料と同様である。

3  中古車売上金額について

(一)  新車・中古車単価比と自賠責保険料控除の要否について

右2のとおり、被告主張の昭和四六年分の二輪及び四輪新車の売上金額は自賠責保険料を含むから、昭和四五年分中古車売上金額(二輪)及び昭和四四年分中古車売上金額(二輪及び四輪)の推計に際して用いられている昭和四六年分の新車・中古車単価比(抗弁3(二)(1)イ、同3(三)(1)イ)も、自賠責保険料を含んだものであって、自賠責保険料を控除した場合の単価比は被告主張の〇・五九〇八(二輪)及び〇・四七七九(四輪)になるとは言えない。

したがって、右売上金の推計額についても、前同様に自賠責保険料を確定して、これを控除しなければならないものである。

(二)  本件推計方法の合理性について

(1) 原告がオートバイ等の販売及び修理業を営み、傍ら大東京火災海上の自動車保険の代理店をも営んでいること及びオートバイ等の販売に際してナンバープレートの登録・下付の代理申請を行っていることは当事者間に争いがない。

右事実を踏まえて、被告は、本件係争各年中に原告が取り扱った自賠責保険契約は、更新分(原告がそれ以前に販売した車両に係る自賠責保険契約の更新をいう。以下同じ。)を除くと、全て原告の車両販売に伴って締結されたものであり、また、本件係争各年中に取り扱った代理申請(ナンバープレートの登録・下付のための代理申請をいう。以下同じ。)も、原告の車両販売に伴っていることを前提として、原告の車両売上金額の算定のために本件推計方法を用いている。しかし、次に考察するように右前提事実は本件において必ずしも成り立つものでない。

すなわち、まず、原告から本件係争各年より前に購入した自賠責保険未加入車両(自賠責保険が失効して未加入状態にあるものを含む。以下同じ。)、他業者から本件係争各年又はそれ以前に購入した自賠責保険未加入車両について、その所有者が原告と本件係争各年中に自賠責保険契約を締結すると、これは本来係争各年分の車両販売を伴わないことになる(自賠責保険未加入車両が多いことは、本件係争各年分の付保加入率が五〇パーセント程度であったこと(この率は当事者間に争いがない。)から明らかである。)。また、原付車など広く普及している二輪車にあっては、友人、知己、親類縁者間の譲渡もおのずと多くなると考えられるが、この譲り受け車両について、原告に代理申請や自賠責保険契約を依頼すれば、これも車両の販売を伴わないものである。更に、原告の商圏に転入してきた車両所有者が、居住地の変更に伴う代理申請あるいは自賠責保険契約の更新を原告に依頼した場合も、車両の販売を伴わない代理申請あるいは自賠責保険契約の締結が起こる。

現に、原告のような車両の販売・修理業者が、車両の販売を伴わない自賠責保険契約や代理申請をも随時取り扱っていることは、《証拠省略》によって明らかであり、《証拠省略》によれば、原告が本件係争各年において車両の販売を伴わない自賠責保険契約や代理申請を取り扱っていたことが認められる。

しかも、原告の営業する地域は、首都圏の近郊住宅地として人口の流入、増加傾向がみられることは、顕著な事実であり、《証拠省略》によれば、原告は、認証を受けた整備工場を持って前記車両修理及び車検代行等を行っていることが認められる。そうであればなおのこと、右に指摘したような車両販売を伴わない代理申請や自賠責保険契約の締結を依頼される件数が、原告の場合は増えるものと推認される。

長谷川証言のうち車両販売を伴わない右取扱件数は非常に少ない旨の供述部分は、同証言によって認められる同人の営業形態に照らし、直ちに右推認を左右するものとは認められない。また、《証拠省略》中には、近藤健二郎の供述として、原告の場合は車両の販売を伴わない右取扱は極めて稀であり、自賠責保険契約の締結件数程度の車両の販売はあった旨の記載があるが、《証拠省略》によれば、近藤健二郎は原告の営業内容について右のような事実を知りうる立場にはなかったことが窺われ、右近藤健二郎の供述記載部分はその根拠が明らかでなく、到底採用できない。

(2) 被告主張の車両販売を伴わない自賠責保険契約であるいわゆる更新分について次に検討する。

被告が右更新分として除外したものは、昭和四六年分については、被告の調査により更新が確認された同四四年及び四五年中の原告取扱の自賠責保険契約件数(《証拠省略》に基づくもの)であるが、昭和四五年分については、同四四年中に原告が取り扱った自賠責保険契約のうち被告により更新が確認された件数(《証拠省略》に基づくもの)のみで、昭和四三年中に原告が取り扱った同契約は調査の対象としていない。そして、昭和四四年分については、更新分の有無を判定すべき同四三年及び四二年中の原告取扱の自賠責保険契約が全く調査の対象とされず、したがって、更新分の除外が全くなされていない。

しかし、自賠責保険期間は一年(一三月を含む。)ないし二年(二五月を含む。)であるから、少なくとも、昭和四五年分については、同四三年中の原告取扱の自賠責保険契約をも、昭和四四年分については、同四二年及び四三年中の原告取扱の自賠責保険契約をも、それぞれ調査の対象に加えて、更新分を確認し、これを除外しなければ、自賠責保険契約の締結件数を基礎とする推計は方法的に不完全なものであることは明らかであり、この点の原告の反論は理由がある。

のみならず、《証拠省略》によれば、新車、特に四輪新車の販売に際しては、その販売元であるディーラーが直接自賠責保険契約をも取り扱う場合があることが認められる。そこで、昭和四六年分四輪新車の販売台数について調べてみると、前記五2(三)掲記の《証拠省略》の対比により、一六台のうち七台がこれに当たると推認されるから、無視できない高率であると言わなければならない。そして、右の場合、右自賠責保険契約の更新に当たって顧客は、当該車両の購入先である原告にその取扱を依頼するのが通常最も多いケースと考えられる。

したがって、右のような原告取扱に係る自賠責保険契約は、車両の販売を伴わない場合であるから、これを除外できる推計方法でなければ車両販売台数の推計方法としては不完全なものと言わざるをえないところ、被告は、本件推計において、これを更新分として除外する手立てを講じていない。現に《証拠省略》によれば、本件推計方法によって中古車売上に伴う自賠責保険契約の締結とされるもののうち、少なくとも、昭和四六年分とされる有限会社杉嘉アルミサッシ、松村茂、株式会社杉嘉木材、細谷裕資及び杉崎嘉春の五件は、昭和四四年又は同四五年中に原告が自賠責保険契約を取り扱わないで販売した四輪新車に係るものの更新であって、昭和四六年分の車両販売台数に計上されるべきものではないことが窺える。

(3) 被告が主張する昭和四六年分の中古車売上台数は、二輪車と四輪車を合わせて六七台(抗弁3(一)(2)ア及びイの合計)であり、うち三七台(二輪車二四台、四輪車一三台)は本件推計方法によるものであるが、同販売台数の推計が正しいとすると、これに見合うだけの仕入台数が存在しなければならないことになる。

右中古車の仕入の大半は、原告が新車等を販売した際に下取る車両をもって充てられると考えられるが、原告の昭和四六年分の中古車仕入台数で車両購入契約書等により確認できるものは、後記4(二)のとおり三〇台(別表六の順号1ないし28、30及び40)に止まり、右売上台数には到底見合うものでない。そして、この台数の差を埋める他の仕入ルート及び仕入台数の存在を明らかにするに足りる証拠はない。それゆえ、この面から前記(1)及び(2)の本件推計方法の合理性に対する疑問を克服して、右売上台数の推計値が過大でないことを首肯させるだけの事実を認めることもできない。

また、昭和四五年分の二輪中古車の売上台数として被告が主張する推計値は、六六台であるが、同年分の二輪新車売上台数は四〇台に止まるから、これに伴う下取が四〇台を超えるとはまず考えられない。この台数差は、若干の期首在庫があったとしても、それだけでは説明できない大幅なものであるところ、前同様、この台数差を埋める他の仕入を明らかにする証拠はなく、右推計値の妥当性をこの面から根拠づけることもできない。

(4) 四輪中古車の売上単価として、被告は昭和四六年分のたった一台の四輪中古車の売上金額を採用し、これによって推計を行っている。

しかし、中古車の販売価格は、その型式、使用年数、使用の程度・態様や新車価格等の諸要素に左右され、区々であるから、右一台がたまたま中古車価格の平均値を体現していたことが確認できないかぎり、本件推計は合理性を欠くといわなければならないところ、本件において、右一台がそのような特別な車両であったことを認めるに足りる証拠はない。

したがって、昭和四六年分及び昭和四四年分の四輪中古車の売上金額の推計は、この点でも不合理と言うべきであり、原告の反論は理由がある。

以上の検討結果を総合すれば、被告主張の本件推計方法は未だその合理性に疑いが存し、採用できないものと言うべきである。

これに対して、被告は抗弁4(一)のとおり、車両の販売を伴わない自賠責保険契約又は代理申請が他にあったとしても、その反面として、原告が販売した車両で原告以外の業者によって自賠責保険契約又は代理申請がされたものもあることになるから、車両の販売を伴わないこれらの件数を除外しなくとも不合理でないと主張する。

しかし、被告の右主張は、前記(1)で検討したような車両の販売を伴わない自賠責保険契約又は代理申請を生じる数多くの例(それが、原告の事業において、異常又は例外であるとは認められないこと前記のとおりである。)を無視し、ある業者から車両を購入した顧客が、同年中に他の業者にその自賠責保険契約又は代理申請のみを依頼するというそれこそ希有な事例を想定し、その件数が原告の場合、右車両の販売を伴わない自賠責保険件数又は代理申請の件数と等しいと言うものであって、到底首肯できるものではない。

また、被告は抗弁4(二)において、本件推計は、(1)中古車を名義変更のみにより販売した台数を計上していないこと、(2)原付車の付保加入率が五〇パーセント程度であること、(3)代理申請件数が町田市役所及び相模原市役所の扱う軽自動車に限られていること、(4)自動車税及び自賠責保険料の残存期間相当額を原告の収入に計上していないことによって、原告の中古車販売に係る台数及び売上金額の最低値を把握したものと主張する。

しかし、本件推計方法によっては、原告の中古車販売台数を合理的に推計できないことは前述のとおりであるから、被告主張の同台数が最低値であるとはたやすく断定できないものである。被告のいう名義変更のみで販売された中古車の台数や保険を付さないで販売した中古車の台数等を実際に把握するか又は合理的に推計する方法及びその推計の基礎事実が主張・立証されない以上、右(1)ないし(3)の事実があるというだけでは、本件推計方法の合理性を根拠付けるだけの意味を持ちえないと言わなければならない。なお言えば、右(2)についてみると、本件係争各年分当時既に、原付車についても自賠責保険契約の締結が罰則をもって強制されていたものである。しかも、車両販売時に自賠責保険契約が締結される率と付保加入率が同等程度と見るべき理由は見出せない。右(3)については、町田市役所及び相模原市役所で扱ったもの以外の車両販売金額が相当額に及ぶことが立証されないかぎり、被告の主張が意味のあるものであるか否かを検討することすらできない。そして、右(4)の事実自体は、本件推計方法の合理性を基礎付ける事実ではないことは明らかである。

よって、被告の抗弁4の主張も失当である。

(二)  昭和四六年分について

抗弁3(一)(2)アで被告が主張する別表三の順号2、3、5ないし16、18、20、21、23ないし30の各売上金額は、原告主張の別表五の順号2ないし15、17ないし27と合致し、金額自体は当事者間に争いがない(同金額が自賠責保険料を含んだものか否かは争いがある。)。もっとも、《証拠省略》によれば、右各売上のうち別表三の順号9、10、25、28、29の売上先名は誤りであって、別表五の該当欄の売上先名が正しいものと認められる。

右各売上金額に加えて、《証拠省略》によれば、原告には別表五の順号1、16の各中古車売上があったこと、これに対応する別表三の順号1及び17の各売上金額は誤りで、同1の金額は現金と手形との合計金額であって、下取車の金額が含まれておらず、同17の金額は車両代金のみで手数料の額が含まれていないことが認められる。

被告は、別表三の順号4、19、22の各中古車売上があったと主張する。

しかし、右順号19については、その売上金の額からみて二輪中古車の売上とは到底認め難いものである。

右順号4について、被告は、本件推計における中古車売上に伴う代理申請分のうち《証拠省略》の番号26がこれであるとするけれども、《証拠省略》によれば、当該欄は昭和四六年四月一日申告、同年三月二日廃車、同月一日受付と記載されていることが認められる。この記載からみれば、これが中古車売上に伴うナンバープレートの登録・下付の代理申請をした車両とは解し難いところ、《証拠省略》によれば、鈴木吉治は昭和四六年三月二日原告から二輪新車を購入している事実が認められ、これらの事実を考え合わせると、順号4の中古車売上があったと認定することには疑問があると言わなければならない。この点について、《証拠省略》には被告の右主張に符合する趣旨の記載があるけれども、右書証は、金子係官が原告から提示を受けた前記領収証控に基づいて認識した昭和四六年分の二輪新車及び中古車の売上、中古車仕入等をまとめて記載した文書と認められるところ、その記載には、先に認定したような売上先名及び売上金額の誤りや中古車売上とは認め難いものがあるほか、吉岡宏章に対する二輪新車五万八五五〇円の売上の記載が同人に対する中古車売上金額と同一であって、重複計上の疑いがある(中古車仕入についても後記4(二)のとおり誤りが認められる。)など、その内容の正確性に疑問があって、この書証のみでその記載通りの中古車売上を認定することはできないものと言わざるをえない。他に右順号4、19、22の売上があったことを認めるに足りる証拠はない。

以上のほか、別表五の順号28ないし35について、原告は中古車売上と主張するが、後記8(一)のとおり、右は原告からディーラーへの下取車の納入すなわち新車仕入代金の決済方法と認められるので、下取車納入損益として別途検討すべきものである。

なお、東京国税局長の照会に対する回答として、乙第一八号証には斧窪行敏が昭和四六年中に中古車を三〇万円で原告から購入した旨、乙第二八号証には松村茂が昭和四六年四月ころ原告から中古車を購入した旨、乙第五三号証には小沢義彦が昭和四六年中に原告から中古車を購入した旨それぞれ記載されている。しかし、乙第一八号証及び乙第五三号証の右記載は、いずれも契約書や領収証等の客観的資料に基づいてなされたものではなく(乙第五三号証にあっては、購入金額すら不明である。)、しかも、次の乙第二八号証及び後記(三)、(四)に見られるとおり、この種の回答には誤っているものが少なくないから、これのみで直ちに原告の中古車売上を認定することはできないものである。そして、乙第二八号証の記載にある昭和四六年四月には、松村茂が前年の四月に原告から購入した四輪新車に係る自賠責保険の更新契約が締結されたものであることは、《証拠省略》により明らかであって、乙第二八号証記載の右回答は誤りである。

他に、昭和四六年分の中古車売上があることを認めるに足りる証拠はないから、原告の同年分の中古車売上金額は、二五九万〇四五〇円と認められる。

(三)  昭和四五年分について

《証拠省略》によれば、別表八のとおり昭和四五年分の中古車売上があったことが認められ、他に右認定を動かす証拠はない。

東京国税局長の照会に対する回答書である乙第一九号証には、稲見敦が昭和四五年一〇月ころ中古車を二万七〇〇〇円で購入した旨の記載がある。しかし、これは購入契約や領収証等の客観的資料に基づいた記載とは認められず、この事実を否定する《証拠省略》と対比して、右乙第一九号証は採用できない。

また、乙第二七号証には、神宮司忠義が昭和四五年一〇月末ころ原告から五〇cc級の二輪中古車を五ないし六万円で購入した旨の申述の記載がある。しかし、これも客観的資料に基づいたものとは認められず、かつ、《証拠省略》により認められる同排気量の二輪中古車の販売価格と比較して極めて高額であり、この代金が妥当なものであることを首肯させる資料もないから、右申述の正確性については疑問があり、乙第二七号証のみによって直ちに同記載の中古車売上を認定することはできない。

他に昭和四五年分の中古車売上があることを認めるに足りる証拠はないから、同年分の中古車売上金額は、二九四万六五〇〇円と認められる。

(四)  昭和四四年分について

《証拠省略》によれば、別表一〇の順号1ないし29のとおり中古車売上があったことが認められ、他に右認定を動かす証拠はない。

また、《証拠省略》によれば、千代田自動車株式会社は昭和四四年六月二三日原告から二輪中古車を代金二万円で購入したことが認められる。《証拠判断省略》

以上のほか、乙第二〇号証には、笠原正次が昭和四四年九月ころ原告から二輪中古車スズキ一二五ccを購入したと思う旨の申述が記載されている。しかし、これも客観的資料に基づくものとは認められず、申述自体もあいまいである。しかも、《証拠省略》によれば、同月二日に同人は二輪新車スズキ一二五ccを購入した事実が認められ、右乙第二〇号証はたやすく信用できない。

更に、東京国税局長の照会に対する回答として、乙第二一号証には醍醐誠が昭和四四年一一月ころ原告から中古車を、乙第二二号証には細谷良之輔が昭和四四年一〇月ころ原告から二輪中古車二五〇cc級を代金一五万円くらいで、乙第二三号証には藤原定雄が昭和四四年一〇月ころ原告から中古車ホンダカブを、乙第二五号証には松村茂の妻が、夫は昭和四四年六月ころ原告から軽四輪中古車を代金二〇万円くらいで、それぞれ購入した旨の記載がある。

しかし、乙第二一ないし第二三号証の回答はいずれも契約書や領収証等の客観的資料に基づいてされたものとは認められず、しかも、《証拠省略》によれば、醍醐誠は昭和四四年一一月一二日に二輪新車を原告から購入したことが認められるし、細谷良之輔の右購入金額は、《証拠省略》によって認められる二輪中古車二五〇cc級の販売価格と比較して著しく高額であるところ、その代金額が妥当なものであることを首肯させる資料がなく、右回答の正確性については疑問がある。また、藤原定雄の右回答は代金額が不明であるのみならず、《証拠省略》によれば、藤原定雄は昭和四四年一〇月一六日に原告から二輪新車スズキ五〇ccを購入し、かつナンバープレートの登録・下付の代理申請を原告に依頼したものであって、同年中には藤原定雄名義のホンダ車について原告が代理申請をした事実はないことが認められる。最後の乙第二五号証は、購入者自身の回答ではなく、かつ、回答の内容にも前記(二)で指摘したような誤りがみられ、その正確性には疑問がある。

よって、右乙第二一ないし第二三号証及び第二五号証はいずれも採用できない。

原告の照会に対する回答である《証拠省略》には、稲葉行夫が昭和四四年中に原告から中古車を購入した旨の記載があるが、これのみではその代金額等が明らかでなく、直ちに原告の同年分の中古車売上として認めることはできない。

他に昭和四四年分の中古車売上があることを認めるに足りる証拠はないから、同年分の原告中古車売上金額は、二三四万〇一三〇円と認められる。

4  中古車売上原価について

(一)  被告は、中古車売上原価について、昭和四六年分はその一部(抗弁3(一)(3)イの額)を、昭和四五年分及び昭和四四年分はその全部を、いずれも推計によって算定するものであるが、これは、本件推計方法によって算定された右各年分の中古車売上金額に原価率を適用したものである。

しかし、前記3(一)のとおり、右中古車売上金額の推計の合理性を肯定することはできないから、同推計額を前提とした右中古車売上原価の推計もまた合理性を欠くものである。

また、昭和四六年分の中古車売上原価の残部(抗弁3(一)(3)アの額)については、期中の中古車仕入金額(別表四の金額)に期首及び期末の中古車在庫額という金額を加算、減算して実額を把握し、同年分の中古車売上金額のうち実額である別表三の売上金額とに基づいて、中古車売上の原価率を算出している。

しかし、被告が期首及び期末の中古車在庫であると主張する右金額を認めるに足りる証拠がない。《証拠省略》によれば、右各在庫金額自体は本件各更正に係る審査裁決において採用されたものであることが認められるけれども、同裁決で用いられているという一事だけで、その金額が客観的に正しい実額と認定し、採用することはできない。のみならず、被告主張の右中古車売上金額(したがって、同金額算定の根拠となった売上車両)と同主張の右中古車売上原価(したがって、同原価算出の根拠となった売上車両)とが対応していることを認めるに足りる証拠もない。

よって、被告主張の中古車売上原価の算定方法は採用できない。

右のとおり、本件係争各年分の期首及び期末の中古車在庫金額は、これを実額では認定できないから、右各在庫金額は本件係争各年分を通じて同額と推定して、中古車売上原価を算出するのが相当である(これを妨げる特段の事情は認められない。)。そうすると、各期中の中古車仕入金額(合計額)が中古車売上原価となる。

(二)  昭和四六年分について

被告主張の別表四の順号1ないし4、6ないし14、19ないし21、23ないし26、28ないし31の各中古車仕入は、原告主張の別表六の順号1ないし8、10ないし13、16ないし20、23ないし28及び40の各中古車仕入と一致し、当事者間に争いがない(松岡某に係る分を除いて、右各仕入は《証拠省略》によれば、別表四の順号10、13、23の各仕入先名は誤りで、別表六の該当欄の各仕入先名が正しいと認められる。また、《証拠省略》によれば、別表四の順号14の山下祥治は別表六の順号25の山下次夫と同一と推認される。)。

右のほか、《証拠省略》によれば、別表六の順号9、14、15、21、22の各中古車仕入があったこと、別表四の順号22は別表六の順号22に該当するもので、丸山律夫への車両販売に際して滝田博名義の車両を下取したものであることが認められる。更に、《証拠省略》によれば、原告は、昭和四六年七月三一日小沢方生に対して二輪新車を販売した際、同人から一万八〇〇〇円で中古車仕入(下取)をしたことが認められる(付言すると、別表六の順号30の仕入金額二万五〇〇〇円は右《証拠省略》記載の下取車価額の書換え後の金額であるが、契約代金額並びに現金及び手形による支払金額と対比すれば、下取車価額としては右書換え前の一万八〇〇〇円が正しいと判断される。)。

被告は、別表四の順号15、17、18、27、及び33の各中古車仕入があると主張する。

しかし、《証拠省略》によれば、順号15の五万円は、松村和雄へ二輪新車を販売した際の手形による支払金額であって、同人からの中古車仕入(下取)ではないことが認められる。また、《証拠省略》によれば、順号17の四万二〇〇〇円は、小山芳夫へ二輪新車を販売した際の手形による支払金額であって、同人からの中古車仕入(下取)ではないことが認められる。そして、順号27の中古車仕入を認めるに足りる証拠はない(本件各更正に係る裁決も、市川好一からの下取車価額一二万円を過大計上として除外したことは、《証拠省略》により明らかである。)。別表四の順号18及び33についてみると、《証拠省略》によれば、右二件は、同表の順号1ないし17、19ないし24、32と共に、金子係官が原告提示の領収証控に基づいて把握したものとして報告書に記載されているものである(ただし、右報告書では、細谷良之輔からの仕入金額は二万円、石川塗装店からの仕入金額は一五万円及び一五〇〇円の二件となっているほか、別表四にはない中古車仕入があるかのように記載されている。)ことが認められる。ところが、この中古車仕入に関する報告書には、冒頭で指摘したような仕入先名の誤りや中古車仕入とは認められないものの記載があり、また、前記3(二)で判示したとおり、中古車売上等に関する記載部分にも誤りがあって、その記載内容の正確性には問題があり、同書証のみで直ちにその記載通りの中古車仕入を認めることはできないものである。それゆえ、別表四の順号5(鎌田克己)、16(内藤本一)、32(石川塗装店。ただし、《証拠省略》の石川忠雄と同一と考えられる。)の各中古車仕入金額についても、これを認めることはできない。そして、別表四の順号18及び33については、他にその記載通りの中古車仕入(下取)があったことを認めるに足りる証拠はない。

以上とは別に、原告は、別表六の順号29、31ないし39をも中古車仕入と主張するが、これらの下取車は、後記8(一)のとおり、原告が新車仕入代金の決済方法としてディーラーへ納入しているので、中古車仕入に計上するべきではなく、下取車納入損益として別途に検討することにする。

そうすると、昭和四六年分の中古車仕入金額は、一六九万四二六〇円と認められる。

(三)  昭和四五年分について

《証拠省略》によれば、別表九の順号1ないし25、27、31及び35のとおり中古車仕入があったことが認められ、他に右認定を動かす証拠はない。

また、《証拠省略》によれば、原告は、昭和四五年九月一九日五十嵐寿光に対して二輪中古車を販売した際、同人から一〇〇〇円で中古車仕入(下取)をしたことが認められ、他に右認定を動かす証拠はない。

右のほか、原告は、別表九の順号26、28ないし30、32ないし34も中古車仕入と主張するが、これらは、右(二)で述べたのと同じく、下取車納入損益として検討されるべきものである(後記8(一)、(二)参照)。

そうすると、昭和四五年分の中古車仕入金額は、一五〇万三五九七円と認められる。

(四)  昭和四四年分について

《証拠省略》によれば、別表一一の順号1ないし22、25ないし31のとおり中古車仕入があったことが認められ、他に右認定を動かす証拠はない。

また、《証拠省略》によれば、原告は昭和四四年中に、今井豊一から八七〇〇円で、草柳重保から一四万円で、五十嵐桂一から三万円で、川俣利夫から三万五〇〇〇円で、それぞれ中古車仕入(下取)をしたことが認められ、他に右認定を動かす証拠はない。

なお、原告は、別表一一の順号23及び24についても中古車仕入であると主張するが、これらは、前記(二)と同様の理由で、下取納入損益として検討されるべきものである(後記8(三)参照)。

そうすると、昭和四四年分の中古車仕入金額は、二〇四万八五三〇円と認められる。

5  昭和四四年分及び昭和四五年分の修繕収入金額について

別表二記載の昭和四四年分の修繕収入金額一一五万七一六三円は、うち一〇七万一七八六円の限度で、同昭和四五年分の修繕収入金額一七三万五六八九円は、うち一六五万〇五二一円の限度で、いずれも原告が認めるところである(昭和四六年分の修繕収入金額は原告が全額について認めるものであることは、前記1で述べた。)。

被告は、原告が認める右各金額を超えて、別表二記載の各修繕収入金額が存在することを、外注費及び修繕収入原価を基礎とする推計(抗弁3(二)及び(三)の各(2)のア、イ)によって主張するところ、右各外注費及び修繕収入原価額自体は当事者間に争いがない。

しかし、被告が右推計において用いている数値のうち、外注費に対する修繕収入金額の割合、修繕収入金額に対するその原価率及び架装部品の販売差益率がいずれも適正、妥当なものであることを首肯できるに足りる証拠がない(前掲乙第四三号証及び第五一号証によれば、右原価率は、本件各更正に係る審査裁決においては五一・〇二パーセントが用いられており、右外注費に対する修繕収入金額の割合及び右販売差益率は同裁決で用いられているものと同一であることが認められる。しかし、これらの数値も、単に本件各更正又は審査裁決で用いられたということだけではその適正、妥当性の証明があったとは言えない。)。また、抗弁3(二)(2)イDの昭和四六年分架装部品の金額が六〇万円との事実についても、右審査裁決である前掲乙第五一号証のみではこれを認めるに足りないところ、他にこれを認めることができる証拠はない。

そして、本件係争各年分の中古車販売台数については、本件推計方法による算定台数を用いているが、同推計値を採用できないことは既に判断したとおりである。

したがって、被告主張の修繕収入金額は、その推計の合理性が明らかにされたとは言えず、原告が認める右金額を超える部分はその証明がないことになる。

6  一般経費

(一)  昭和四六年分について

(1) 争いのない一般経費

抗弁3(一)(4)のアないしサの各金額及びそれが一般経費となるものであることについては、当事者間に争いがない。

(2) 自賠責保険料について

前記2のとおり、車両売上金額に含まれている自賠責保険料は一般経費として控除すべきものであるから、その金額について判断する。

《証拠省略》によれば、別表七のうち順号18、98、101、107、108を除く各順号についてはその記載のとおりであり、順号の18及び108についてはいずれも一万五九五〇円が自賠責保険料となるものであり、順号98の自賠責保険料は一万五四〇〇円であると認められる。

他に右認定を動かす証拠はない。

《証拠省略》によれば、田村洋子は昭和四六年六月一二日原告から軽四輪中古車(四五年式)を代金二六万円うち車両代二三万円、架装代四〇〇〇円、その他諸手数料一万二〇〇〇円、任意保険料一万五五〇〇円、値引き一五〇〇円で購入したが、同車両について原告は自賠責保険契約を取り扱っていないことが認められる(自動車取得税その他の四輪車購入に係る諸手数料を考えると、右のその他諸手数料一万二〇〇〇円に自賠責保険料が含まれていたとは認め難い。)。そうであれば、別表七の順号101の自賠責保険料は認められないと言わなければならない。

また、《証拠省略》によれば、岩渕政男が昭和四六年一一月六日原告から購入した軽二輪中古車については、前所有者である横川裕により横川伸治名義で同年三月二六日から一年間の自賠責保険契約が締結されており、岩渕政男の右購入時にも同契約は解約されておらず、原告は同車両について自賠責保険契約を取り扱っていないことが認められる。

よって、同順号107の自賠責保険料も認めることができない。

以上のとおりであるから、一般経費として控除すべき自賠責保険料の合計額は、八〇万五九〇〇円と認められる。

(3) したがって、一般経費の合計額は二八五万六〇八二円となる。

(二)  昭和四五年分について

当年分の一般経費の実額を明らかにする証拠はないから、昭和四六年分の経費率を昭和四五年分総収入金額に乗じて推計するのが相当である(この算出方法については、当事者間に見解の対立はない。)。

右経費率は、昭和四六年分の一般経費合計額二八五万六〇八二円(右(一)(3)参照)を同年分の総収入金額一五四三万八八七〇円で除した一一・二三パーセントであるから、これを昭和四五年分総収入金額二二七五万二六〇〇円に乗じれば、同年分の一般経費は二五五万五一一七円と推計される。

(三)  昭和四四年分について

右(二)と同様に、昭和四四年分総収入金額一八六三万九〇五六円に昭和四六年分の経費率一一・二三パーセントを乗じた二〇九万三一六六円と推計される。

7  昭和四六年分雇人費について

(一)  昭和四六年分の雇人費として、上川英夫及び小山田広二に対する給与の合計額一一〇万円があることは当事者間に争いがない。

(二)  原告は、右金額のほかにアルバイトに対する支払分一八万円があると主張し、原告本人尋問の結果(第一回)中で、原告の使用人は、昭和四四年が一名、同四五年が二名、同四六年が三名とアルバイト一人であったと供述する。

ところが、《証拠省略》によれば、原告は、本件各更正に係る審査請求においては、昭和四六年にはアルバイトとして雇用していた横川裕ほか二人に合計一八万円の賃金を支払ったと申し立てていることが認められる。また、昭和五三年二月一六日付け原告準備書面においては、アルバイトは昭和四四年が一人、同四五年、四六年が各二人と主張している。

右のとおり、アルバイトに関する原告の主張と供述は一定せず、相互に矛盾し、かつ、具体的事実も詳らかでないから、たやすく採用できない。

(三)  したがって、昭和四六年分の雇人費は一一〇万円に止まるものである。

8  下取車納入損益

(一)  昭和四六年分について

《証拠省略》によれば、原告は昭和四六年中に、本田技研から仕入れた新車の販売に際し、別表六の順号31ないし37のとおり下取車を下取り、これらをそれぞれ二一万円、七万一五〇〇円、一五万円、一四万五五〇〇円(以上四件は別表五の順号30ないし33に相当する。)、三万円、四万九〇三〇円及び八万五〇〇〇円で本田技研に納入したことが認められ、他に右認定を動かす証拠はない。

《証拠省略》によれば、原告は、昭和四六年一月、本田技研から仕入れた小型四輪新車を西沢信美に販売した際、同人から三〇万円で下取車を下取り、これを本田技研に一七万五〇〇〇円で納入したことが認められる(原告は、右三〇万円を昭和四五年分の中古車仕入として、別表九の順号34のとおり主張し、甲第七号証の三四の購入契約書には昭和四五年一二月三一日納車との記載があるが、その自賠責保険申込は昭和四六年一月一一日であるから、同申込以前の納車は考え難く、右認定のとおり昭和四六年分の取引とみられる。)。他に右認定を動かす証拠はない。

また、《証拠省略》によれば、原告は昭和四六年中に、新車販売に際して、別表六の順号29、38、39のとおり下取車を下取り、これらをそれぞれ別表五の順号28、34、35のとおり納入したことが認められる。他に右認定を動かす証拠はない。

なお、《証拠省略》によれば、原告は自己所有の目的で昭和四六年六月ころ新車を本田技研から購入した際も、下取車を五万円で同社に納入した(別表五の順号29に該当する。)ことが認められる。しかし、これは原告本人分であるから、下取車納入損益には計上されない。

被告主張の下取車下取額一二四万四九二〇円は、以上認定の下取額のうち、前記西沢信美分の下取額を除外し、原告分の下取額を五万円(納入額と同額)として計算し、その下取車納入額一四一万二三八〇円は、前記乙第四三号証及び第五二号証によれば、本田技研分九六万六〇三〇円、ホンダ自販分五万円、東京マツダ分三九万六三五〇円を合計した金額と認められる。しかし、東京マツダ分三九万六三五〇円については、《証拠省略》によってもその内訳を明らかにできないものであり、他にこれを認定できるだけの証拠はない。そして、以上の事実は、被告主張の下取車下取額と下取車納入額との間に車両の完全な対応が欠けていることを示しており、被告主張の下取車納入益算出方法はこの点でも採用できないものである。

以上のとおりであるから、下取車下取額は一四九万四九二〇円、同納入額は一二七万六〇三〇円であり、下取車納入損二一万八八九〇円が存在することになる。

よって、右損金は当年分の所得金額の算定において、必要経費として控除されなければならない。

(二)  昭和四五年分について

《証拠省略》によれば、原告昭和四五年中に、本田技研から仕入れた新車を販売する際、別表九の順号26、28ないし30、32、33のとおり下取車を下取り、これらを本田技研にそれぞれ三万五〇〇〇円、八万円、二二万七五〇〇円、三万五〇〇〇円、二一万円及び六万円で納入したことが認められる。他に右認定を動かす証拠はない。

そうすると、下取車下取額は七五万〇六一〇円、同納入額は六四万七五〇〇円であり、下取車納入損一〇万三一一〇円が存在することになる。

(三)  昭和四四年分について

《証拠省略》によれば、原告は、昭和四四年一月、本田技研から仕入れた新車を清水重幸に販売した際、同人から一四万円で下取車を下取り(別表一一の順号23)、これを本田技研に同額で納入したことが認められる。他に右認定を動かす証拠はない。

また、《証拠省略》によれば、原告は昭和四四年五月、多摩ホンダから仕入れた新車を木目田友治に販売した際、同人から三万円で下取車を下取り(別表一一の順号24)、これを多摩ホンダに一万五〇〇〇円で納入したことが認められる。他に右認定を動かす証拠はない。

そうすると、下取車下取額は一七万円、同納入額は一五万五〇〇〇円であり、下取車納入損一万五〇〇〇円があることになる。

9  以上により、本件係争各年分の総所得金額(事業所得)を算定すると、昭和四六年分が一八三万二四〇七円、昭和四五年分が一七七万七九九七円、昭和四四年分が八七万一六二一円となる。

10  そうすると、昭和四四年分及び昭和四六年分について、いずれも確定申告に関する総所得金額を上回る所得があったことの証明がないから、右確定申告年分の本件各更正は、原告の所得金額を過大に認定した違法があり、取消しを免れないものである。

また、昭和四五年分の本件更正は、総所得金額一七七万七九九七円の範囲内では適法であるが、これを超える部分は違法であり、この部分について取り消されるべきものである。

そして、昭和四四年分及び昭和四六年分の本件各賦課決定は、右違法な更正を前提としてされたものであるから、取消しを免れず、昭和四五年分の本件賦課決定は、同年分の本件更正のうち右取り消される部分に対応する部分が違法であるから、この対応部分について取消しを免れない。

六  結論

よって、本訴請求は、昭和四四年分及び昭和四六年分の本件各更正及び本件各賦課決定並びに昭和四五年分の本件更正のうち総所得金額一七七万七九九七円を超える部分及び同年分の本件賦課決定のうち右総所得金額を超える部分に対応する決定の部分について理由があるから、この範囲で認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行訴法七条、民訴法八九条、九二条本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山本和敏 裁判官 太田幸夫 裁判官杉山正己は転官につき署名、捺印できない。裁判長裁判官 山本和敏)

〈以下省略〉

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